小鳥のしごとは、まい日森のなかをとびまわって、たきぎをとってくることでした。ハツカネズミは水をくんで、火をおこし、おぜんごしらえをする役めです。それから、腸づめは煮たきをすることになっていたのです。

しあわせすぎるものは、なにかかわった、あたらしいことをやってみたがるものです。そんなわけで、ある日、小鳥はとちゅうでほかの鳥にであって、じぶんの身のすばらしいしあわせを話して、さかんにじまんしました。ところが、その鳥は、
「おまえはばかだな。おまえはほねのおれるしごとをしているのに、ほかのふたりはうちでらくをしているじゃないか。」
と、小鳥をこばかにしていいました。

なるほど、そういわれれば、たしかにそのとおりです。だって、ハツカネズミは火をおこして、水をくんでしまえば、あとはじぶんのへやにはいって、おぜんごしらえをしろといわれるまでは、やすんでいられます。腸づめは土なべのそばにいて、食べものの煮えぐあいを見ていればいいのです。そうしているうちに、ごはんどきになったら、おかゆか、煮もののなかを、せいぜい四回もころがりまわれば、それで油っけも塩っけもうまくついて、したくもできあがりというわけです。そこへ小鳥がかえってきて、おもたい荷をおろすのです。そこで、みんなはおぜんについて、やがてごはんがすみますと、あしたの朝までぐっすりねむります。なるほど、まことにもってすばらしいくらしです。

小鳥は、ほかの鳥に知恵をつけられたものですから、つぎの日は、
「ぼくは、もうずいぶん長いあいだ下男しごとをやってきた。まるで、きみたちにばかにされていたようなもんだ。ここらでひとつ役めをかえて、ちがったやりかたをしてみようじゃないか。」
と、いって、どうしても森へいこうとはしませんでした。

ハツカネズミばかりか腸づめまでが、小鳥にいってきてくれとしきりにたのみましたが、小鳥はなんとしてもききいれませんでした。そこで、とにかくやってみなくてはというわけで、みんなでくじをひいてみました。すると、腸づめにくじがあたりましたので、腸づめがたきぎをとりにいくことになりました。そして、こんどは、ハツカネズミが料理番になり、小鳥が水をくむ役にまわりました。

さてそれで、どんなことになったでしょうか。

腸づめは森をさして、でかけていきました。いっぽう、小鳥は火をおこして、ハツカネズミはふかいおなべの用意をしました。こうして、腸づめがあしたのたきぎをもってかえってくるのを、待つばかりになりました。

ところが、その腸づめはいつまでたってもかえってきません。それで、ふたりは、腸づめがどうかしたのではないかと心配になってきました。そこで、小鳥がちょっととんでいってみました。

すると、あまり遠くないところに、道ばたに一ぴきの犬がいました。この犬が、かわいそうに、腸づめを見るとどうじに、いいえものがきたとばかりにひっつかまえて、殺してしまったのです。小鳥は犬にむかって、
「そりゃあおまえ、だれがみたって強盗というもんだぞ。」
と、はげしくもんくをいいたてました。

けれども、犬のほうでは、
「おれは、あの腸づめのやつが、にせ手紙をいくつももっているのを見つけたんだ。だから、おれがあいつの息の根をとめてやったのさ。」
と、いいますので、どうにもしかたがありませんでした。

小鳥は、しおしおと、たきぎをせおってとんでかえりました。そして、見たり、きいたりしてきたことを、ハツカネズミに話してきかせました。ふたりは、すっかりかなしくなりましたが、それでも、できるだけのことをしよう、そうして、いつまでもふたりでいっしょにいよう、と、かたく約束しました。

こういうわけで、小鳥は食卓のじゅんびをし、ハツカネズミは食べものの用意をしました。そして、ハツカネズミはすっかりごはんごしらえをしてしまおうと思いました。そこで、まえに腸づめがやったように、土なべのなかにはいって、おかゆのなかをころがりまわって、味をつけようと思ったのです。ところが、ハツカネズミはまんなかまではいらないうちに、身動きができなくなってしまいました。そして、皮と毛をなくすだけではすまないで、命までもなくしてしまったのです。

小鳥がやってきて、食べものをならべようとしましたが、料理番のすがたが見えません。小鳥はあわてふためいて、たきぎをあっちこっちへほうりだして、大声によびながら、さがしまわりました。でも、料理番のすがたはどこにも見えません。

こんなことでうっかりしているうちに、火がたきぎのなかにはいってしまって、火事になりました。小鳥はいそいで水をくみにいきました。ところが、水をくむおけが井戸のなかへおっこちるひょうしに、小鳥もいっしょにおっこちてしまいました。こうして、小鳥はもうどうすることもできなくなって、あぶあぶしているうちに、とうとう水におぼれて死んでしまいました。